AGAでは、男性ホルモンであるテストステロンから5αリダクターゼという酵素によってジヒドロテストステロン(悪玉)が作られます。この悪玉ホルモンが毛乳頭細胞に取り込まれ、脱毛シグナルを毛母細胞へ送ることで髪の成長が阻害されます。
髪の成長が阻害されると、髪が十分に育たなくなり、抜け毛も増えて、薄毛が目立つようになります。AGA治療では、このジヒドロテストステロンに必要な5αリダクターゼにアプローチする薬物療法があります。
毛周期(ヘアサイクル)
AGAによる薄毛のメカニズムを理解するには、毛周期(ヘアサイクル)について確認しておくことが大切です。
毛周期とは、髪が生えて抜け落ち、再び生えてくる周期のことです。髪の毛1本ずつ異なる毛周期をもちます。毛周期(ヘアサイクル)は、1サイクルが男性が3~5年、女性が4~6年です。それでは、毛周期を構成する3つの段階を詳しくご紹介します。
成長期
成長期とは、髪が成長する段階のことです。髪は、毛母細胞が分裂することで生成されますが、この毛母細胞の分裂が活発なため、髪がどんどん成長できます。成長期の髪は全体の85~90%とされています。また、髪は1日0.3~0.4mm成長し、1年で約15cm伸びます。
退行期
成長期の次の段階に退行期がきます。退行期では、毛母細胞が毛乳頭細胞から離れます。毛乳頭細胞からの栄養の供給が低下して毛母細胞の働きが低下すると、髪が成長しづらくなります。退行期は2~3週間で、髪全体の約1%を占めます。
休止期
休止期は、髪の成長が完全に止まった状態です。毛乳頭細胞が縮小して栄養の供給や指令が停止した状態で2~3ヵ月続くとされています。休止期の髪が占める割合は全体の10~20%です。
発生期
毛乳頭細胞が活動を再開すると、新しい毛が古い毛を押し出すように生えてきて、古い毛が自然に抜けます。
AGAによりヘアサイクルが乱れた状態では成長期が短縮された状態となります。髪がどんどん伸びるのは成長期であり、ヘアサイクルが乱れて成長期が短縮した状態では髪が十分に育ちません。短く細い髪が増えてしまいます。そうすると地肌が透けて見えるようになります。これが、いわゆる薄毛の状態です。
ヘアサイクルが乱れる原因
ヘアサイクル乱れる原因は多いですが、いくつみていきましょう。
生活習慣の乱れによる睡眠不足
生活習慣の乱れた生活を送っていると質の良い睡眠を確保できず睡眠不足となるケースが多いですが、喫煙、過度の飲酒などのとともに睡眠の乱れは、毛周期が乱れる原因です。睡眠の質が落ちると、髪の生成に必要な成長ホルモンの分泌が滞ります。成長ホルモンは、良質な睡眠をとることで分泌されます。治療の効果を最大限にするには就寝時間も気をつけたほうが理想的です。睡眠不足は勿論ヘアサイクルの乱れを招きます。
喫煙
喫煙はニコチンの作用で血管が収縮し、頭皮への血流が低下します。その結果、毛乳頭細胞への栄養の供給が低下して、毛母細胞の分裂に悪影響を与えます。
過度の飲酒
過度な飲酒は、髪の生成に必要な亜鉛を消費します。
人体はアルコールを肝臓で分解する際に、アセトアルデヒドという有害物質を発生させます。
このアセトアルデヒドは、AGA(男性の薄毛)の大きな原因と言われているDHT (ジヒドロテストステロン)という男性ホルモンを増加させる働きを持っています。
適量のアルコールであれば、肝臓がアセトアルデヒドを無害な酢酸に分解してくれるのですが、アルコールを過剰摂取すると分解しきれずに、体内を循環してしまうことになるのです。
結果、体内を循環するアセトアルデヒドはジヒドロテストステロンを増加させ、薄毛の原因を増加させてしまうことになります。
アセトアルデヒドという有害物質は、先に述べた睡眠にも悪影響を与えます。
「寝酒をすると良く眠れる」というのは間違った認識で、実際は飲酒をしてから寝ると睡眠の質は低下し「夜中に目が覚めてしまう」「眠った気がしない」「疲れがとれない」などの弊害が生じます。
質の良い睡眠は、毛髪の成長に関わる成長ホルモンの分泌には欠かせない要素です。
肝臓はアルコールを分解する臓器として知られていますが、いっぽうでタンパク質などを合成する働きもあります。 毛髪は主にタンパク質で構成されています。 過度な飲酒によって肝臓がアルコールの分解に忙しくなってしまうと、タンパク質の合成が間に合わなくなってしまい、その結果、毛髪の成長に悪影響をもたらすことになります。
人体はアルコールを体内で分解する時に、多くの栄養素を消費します。
中でも多く必要とする栄養素がアミノ酸とビタミン類です。 このアミノ酸とビタミン類は毛髪の育成にも欠かせない栄養素です。
つまり、アルコールの分解によってアミノ酸とビタミン類が使われてしまうと、毛髪の方にまで栄養素が行き届かなくなってしまうというわけです。
禁酒をしたことによってストレスが溜まってしまえば、そのストレスが薄毛の要因になることもあります。
お酒が好きな方は、ぜひ「適量」を意識してお酒を楽しんでいただきたいものです。